野間貞人さんは、髙島屋のハウスエージェンシーである株式会社エー・ティ・エーのディレクター・デザイナー。京都市立芸術大学から大阪のエー・ティ・エーに入社。2005年に東京に異動。髙島屋宣伝部への2年の出向を経て、2011年から全店共通の担当としてエー・ティ・エーへ戻る。東京異動以来5年以上の付き合いになる大洋印刷 営業部 大場とともにお話しを伺った。
野間:3年です。ピエール・カルダンは2009年で日本にブランド上陸して50年、昨年アトリエ創立60年でした。昨年はカルダン本人も来日しています。
野間:とても気合いの入る仕事ですね。担当になったときは、ピエール・カルダンのブランドイメージをリニューアルするタイミングでした。新しく方向を決めるのは楽しいですね。思い切ってモード寄りにして、今までの髙島屋にはない世界で表現しました。
野間:そうですね。スタッフも総入れ替えしました。カメラマン、スタイリスト… ロケだったのをスタジオ撮影にしました。カメラマンは新人のときから知っている、TAKAKI_KUMADAさんに頼みました。KUMADAさんはそのころから同世代で元気なカメラマンでした。あの方の写真は良いですよ。強いです。データの仕上げも上手ですよね。こだわっているところがハッキリしてる。売れっ子だから大変だったんですけどね。
そして驚いたことに、今カルダンの日本のクリエイティブ・ディレクターは藤田恭一さんなんです。藤田さんは僕が高校生の頃に読んでいたファッション誌によく掲載されていた「キョウイチフジタ」という、今ではUNDERCOVERみたいな服をつくっていたブランドのデザイナーでした。格好良くて好きだったんです。うわっ、凄いなと。つながりを感じましたね。
野間: そうですね。2年は通さないとブランドイメージが定着しませんから。
野間:大阪では4年働いていました。そろそろヤバいな、どうしようかなと悶々としていましたね。
そんなときNHK「プロフェッショナル」に出演している佐藤可士和さんを見たんです。「この人に一回会ってみたい。」と思い、それで審査員だった朝日広告賞に一般公募で応募しました。結果、グランプリをとることができました。2005年度です。
応募数は何千点でしょうから、今思えば奇跡かもしれませんね。キャリア的にも賞も取っておきたかった。
野間:CGや合成などのデジタルが増えてきた時代に、超アナログにこだわって、絶対一発撮りで勝負しようと考えていました。
朝起きてアイデアを思いついて、気の合うカメラマンに連絡して日曜日にスタジオに籠もって撮影しました。3点シリーズで、シャベルカーとブルドーザーとダンプ。僕、パンツ一丁で演じました。前バリとかも用意していたんですよ。
大場:ふーん、けっこう鍛えているんですね。
野間:そこですか(笑)
コンセプトは「どんな機械であっても人間が動かす。」それがコマツの企業の姿勢にもなるのかな、と。
それでこれ、コピーがないんです。前の晩までずっと悩んで。コピーライターも用意していたんですけど、「すいません、コピーなしにしたいです。」と。
大場:これはコピーがなくても一目でわかります。
野間:さっぱりした潔いデザインが好きなんです。ごちゃごちゃ色んなことしたくない。文字で説明しないでわかる、色だけでわかるというのは、格好良いですよね。
大場:これは、撮り方によってはギャグになっちゃいますね。
野間:そうなんです。写真は冗談で終わらないように、思いっきりシビアに仕上げました。暗室にカメラマンと籠もり何度も焼き付けて、やっと出たという感じです。空気感はデジタルでも出せるかもしれない。でも、どこかで足りなくなる。勝つのは本物だと、未だに思っています。できれば修正はしたくない。
大場:印刷でもそうですよね。写真が良くないと、いくらレタッチしても良くならない。
野間:そして朝広でグランプリをとってすぐに、東京からお呼びがかかりました。
東京にきて、まずは、新宿髙島屋のリニューアル広告デザインを担当しました。その後、タカシマヤが企業広告出すことになって、眞木準さんと仕事することに。ちょうど良いタイミングでした。「デザイナーは野間ちゃんで」と指名していただきました。
大場:「花はどこへ行った。」「薔薇と書けなくてもバラになれる。」ですね。眞木準さんが書いたコピーも素敵でした。
野間:あの頃おもしろかったですね。夏に西麻布の眞木準企画室に打合せに行って。とても良い雰囲気の事務所でした。ご本人はオーラがありましたね、ホントに。またいい人なんですよね。
東京に来ると人の繋がりが大阪とは全然違いました。関西だとカメラマンも少ない、レタッチャーもほとんどいない。モデルもいない。競えるデザイナーもそんなにたくさん同年代でいるわけじゃない。
大阪に帰る考えもありましたが、やっぱり東京にいたいなと思いました。
野間:なんで大洋さんは、おもしろい人が揃ってるんでしょうね。毎年毎年おもしろい人が入ってきてるじゃないですか。
大場:今年も入ってきました(笑)
野間:みんなすごい、みんな変わってる。不思議な人間を引っぱってくる力があるんでしょうか。会社って、そうしてドンドンおもしろくなりますよね。
大場:エー・ティ・エーさんでおもしろいと思う人はいますか。
野間:いますよ。人と違うことをしてやろうと思ってる人はおもしろいじゃないですか。それってデザインだけじゃなくてもそうですよね。
大場:野間さん、印刷好きですよね。
野間:ヘラでインキを混ぜるところを見てたら、もうワクワクしますね。
東陽町のグラフィック・ワークスに行くと、匂いでもうヤバいですよ。
紙とインキの匂いは好きですね。小学生のときに教科書の匂いを嗅いでいました。何か良いんですよ、その匂い。夏の国語の教科書が一番良いんです(笑)
窓側の席で日を浴びてコンガリした感じ。梅雨の時期は匂いが重い(笑)
後に大学に入ってから、匂いの正体は紙とインキだって気づいたんです。
未だに小説の匂いは嗅ぎますね。
大場:ちょっとおいた感じが良いんですよね。
野間:新しく出た文庫本の匂いも良いですね(笑)
野間:やっぱり人ですね。
僕は東陽町のインキ混ぜてくれる人が大好きなんです。
その人と、大井工場の菊半裁の機長さん。印刷立ち会いのとき「もう少し藍を足しますか。」と気持ちのいいタイミングで言ってくれる。「あ、今日もこの人がやってくれている。安心できるな。」と思うんです。迷ってることやイメージを、何となくわかってくれてるでしょう。そういうことは嬉しいですよね。結局 “人”なんだと思います。
大場:価格勝負では正直、大企業に勝てない。中国にも押される。日本で、この中小企業の大洋印刷が生き残るには、人が好かれなきゃいけないし、髙島屋さんが求めてる印刷物が何なのかを提案しなければいけないですね。
野間:あと、紙とインキは、絶対になくなってほしくないです。
大場:匂いが嗅げなくなっちゃいますからね(笑)
取材写真:有吉淳
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