2018/08/27
大洋の印刷名人 プリンティングディレクターが語る、 印刷とは?

紙や印刷でできる表現ってまだまだあるんです。ホントに。未知数なほど。先月発売された『デザインのひきだし』には、各社の多種多様な表現が掲載されています。特集「これなら使える!オフセット印刷で特殊印刷100連発」では弊社の“TAIYOベストワン(インキ)”と“マルチスクリーン(製版)”2つの印刷技術について取り上げていただきました。

― はじめまして。営業部の小川です。
今回ブログでは“TAIYOベストワン(インキ)”と“マルチスクリーン(製版)”が生まれたきっかけや印刷物について、大洋の印刷名人3人(PD)とインタビュー形式でお届けしていきたいと思います。

左から:斎藤孝之 西内孝也 奥山大輔

大洋印刷のPD(プリンティングディレクター)

― PDとはどんな役割を担っているのですか?

弊社が提供する印刷物の品質保証や不良品廃絶の為の関わりを持つこと。そして、お客様の要望やイメージを印刷で具現化することだと思います。さらには受注した案件が円滑に進むよう各制作部署の状況をプラン立てることも必要になってきます。

一番は大洋印刷というブランドの価値向上を担っていると思います。その為にはお客様の求めている以上の製品を常に提供することが役割だと思います。

お客様やアートディレクターが印刷で表現したいものを受け止めて、紙やインクの提案、印刷の刷り色の確認、高品質な印刷物を制作・ディレクションすることが役割だと思います。

知識と感性が試される

― PDとして求められることは?
普段から気をつけてることなど聞かせてください。

今までの多岐にわたる知識と経験、アイデア、気付き、常識に囚われない発案などあるかと思いますが、まずは『基本に忠実であること』は意識しています。

幅広い知識やスキルはお客様に信頼されるために必須です。打合せ(校正)時に質問されたことに対し、打開策・アイデアを即答できるよう常に『技術向上』と『情報(知識)の収集』をするようにしています。

プリンティングディレクターは、印刷に精通していなければならないと思います。紙、インク、製版、刷版、印刷と幅広い知識が要求されます。さらに、それらの知識だけでは消化できない部分、『感性』がとても大事だと考えます。『感性』は勉強してもなかなか身につくものではないので、とにかく経験を増やしあらゆる状況にも対応出来るようにしています。

― 情報収集はどの分野においても大切なこと。今のように広告メディアも増え、常に変化し続ける時代なら尚更ですね。アイデアはそいうところからしか生まれないと自分も思います。そして、本当にいいアイデアかを判断するために「感性」は必要とされるのですね。

いいものづくりには熱量が大事

― “いい印刷”と”ダメな印刷”の違いは?

“いい印刷”は、お客様が納得・満足してくれた印刷物。
“ダメな印刷”は、お客様からクレームのついた印刷物。

― なるほど。意見が揃いましたね(笑) PDはお客様と直接会う機会も多い。そのため、お客様が満足する顔を見ることができるのはやりがいに繋がりますね。率直な意見や感想が聞けるというのも貴重な財産にもなりますし。ただ、いいことばかりじゃないのがPDの仕事。怒られるときも営業といっしょに頭を下げに行くと聞いています…

アートディレクターやデザイナーさんは、提案、撮影、そしてデザイン、レイアウトと試行錯誤し入稿に至っています。それで印刷が良くなかったら、今までやってきたことを台無しにしてしまいます。同じまでとは言わないですが、こちらも”熱量”を持って取り組む事により、お客さんが求めていたものが再現されれば、それが本当の”いい印刷”ではないでしょうか。

― その通りですね。アートディレクターやデザイナーの方々は、広告をつくるためにあらゆるプロセスを経てきています。印刷はその最終工程になることが多いため、PDとしてその想いに応えることがお客様が求めるいい印刷物を生むことに繋がるのですね。

記憶にのこる印刷

― これまで記憶に残っている印刷物を教えてください?

失敗例は数えきれないほどありますが、設備的に整っていなかった頃(平台校正機が4色機でなかった頃等)はOKになった校正刷りに本機刷りがまったく合わないことがありました。最近でも全て解消した訳ではないのですが、それでも時代の流れの中で設備が更新し、製版と印刷の係わりも見直され、校正刷りのあり方(本機校正等含め)も変化し、生産自体の考え方が良い方向に向かっているのではないかと思います。今までで一番印象に残っているのはある時計メーカーの広告ポスターですね。銀紙に印刷したのですがいろんな工夫がしてあってお客様に大変喜ばれた記憶があります。いまだに忘れられません。

モノクロ色調4C製版の仕事をいただき、できる限り濃くしたいと相談されました。「1C増やして補色でグレーでも入れないと濃く見えないかなぁ。」と、デザイナーはコストを気にしていました。そこでスミ×スミ×ニスの3Cでの印刷を提案し版の作成方法を検討。試刷りを入れデザイナーに見せたところ、その場でOKをいただき本生産まで行けました。コストも抑えられ、早急な対応に感謝までしていただけたことが今でも記憶に新しいです。

成功体験とは少し違いますが、アートディレクターの方から画像の修正指示が入り、求めていたものに上手くはまった時の過程が楽しくやってきて良かったと思います。

きっかけは、リクエストから

― “TAIYOベストワン(インキ)、マルチスクリーン(製版)”この2つが生まれたきっかけは?

“TAIYOベストワン(インキ)”は高発色を意識して使用するインキなので、印刷再現が比較的良いとされる用紙がより良いのですが手触りや風合いを大事にしたいと言うリクエストも多くあります。あるお客様のパンフレットを大洋ベストワンで印刷した際、パステル調の画材で描かれたイラストを多く使用しており用紙も上質系のものでしたが、通常のインキでは再現出来ないほどの綺麗なパンフレットに仕上げることができました。今後もいろんな可能性にチャレンジしていきたいと思います。

“マルチスクリーン(製版)”は2011年頃にお客様の受注条件として設備しました。それから現在に至るまで継続してお仕事をいただいております。他社様にもある技術ですが、継続して使用することでマルチスクリーンと言えば大洋印刷が得意ですよと言われたいですね。

大洋印刷のアピールポイントは?

仕事の大小限らずクオリティを大切にするところです。知識とスキル満載な人が多数在籍している為、いろいろな打開策やアイデアが出てきます。その中から最良の方法を選択することで、最高の製品(印刷物)にすることができるのだと思います。

大洋のアピールは何と言っても技術です。あらゆる分野において経験豊富なエキスパートがいる為、初校から精度の高いものができるのです。

― 最後にお客様に向けてメッセージをお願いします。

最近ではデジタルしか知らない世代のデザイナーさんやアートディレクターさんが増えてきていると思いますが、アナログ的な技術、知識(アミ点とか角度、モアレとか)を知るとまた違った視点での発想が生まれ、デザインの幅が広がるかも知れないので是非弊社に遊びにきていただきたいです。インキの練りを見るだけでも結構面白いと思いますよ。

相談するだけでも相談してください・・・と言いたい所ですが、一緒に作品を作るお手伝いをさせてください!!

いいデザインをする為には、印刷の知識がないといけないと思います。大洋印刷に来て、印刷の奥深さを知っていただきデザインの可能性を広げて欲しいです!

PDという仕事は職人である一方、時代の変化にも順応していなければならない。師匠から弟子へ、あるいは上司から部下へ培われてきた技術が受け継がれるだけでなく、そこに新たな感性が取り入れられることで、大洋印刷らしいまた新たなPDが生まれていくのではないでしょうか。

― 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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