版の凸部にインクを付け、その凸部を紙に押し付ける圧により印刷物が仕上がります。歴史は古く、印刷が産業として成り立つことができたのは、この活版印刷の発明があったからこそですね。
昔ながらの活版ではありますが、オフセットのように、グラデーションなどの細やかな網点の表現やものすごく大量の印刷はちょっと苦手です。
ですが、実際に手に取って感じる手触りや、温かみのある優しい風合いなど、これは活版独特のものです。
押し付ける圧を強くして用紙をへこませるデボス加工やオフセットとの併用など、古くからの印刷技術と現代広く使われている印刷技術を組み合わせることで様々に可能性を広げることもできるかと思えます。
さて、そんな活版ですが、下の画像は大洋印刷の活版職人であり、グラフィックデザイナーでもある宗像の手による制作物です。
質問形式で、制作の意図などを聞いてみました。
A.毎年の年賀状作成にあたり、「活版印刷」による新しい表現を模索しています。今年は「繊細な印刷」をテーマに作成しました。デザインは、テーマにした「繊細さ」が表現できるようなものを考えました。
イラストはパブリックドメインの図柄をトレースし、あまり時事的要素(お正月感)を入れないことでインテリアとして飾ってもらえるような仕上がり、を意識しています。
A.特Aクッション1.0、新色コースター0.5、スノーブルFS #350の3種採用です。
A.背景用にCTP樹脂版を1版、牛の主線とスミ文字用に亜鉛版を1版、牛の黄土色の部分用に亜鉛版を1版の、計3版で作成しています。
CTP樹脂版はあまり圧がかけられませんが、繊細な表現ができます。亜鉛版は強く圧がかけられる分、しっかりと印刷が出るという特性があり、それぞれの良さを組み合わせています。
A.全面に淡く刷っているテクスチャーが、一見すると活版印刷のベタ版で起こりやすい「刷りムラ」のようにも感じますが、実際は網版で印刷したもので、複数枚、またはデザインデータと見比べて初めて設計されたテクスチャーだと分かるようになっています。この活版での繊細な表現が今回のこだわりになっています。
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